在宅医療専門診療所とは

 2016年の診療報酬改定時に、外来機能を有しないいわゆる在宅医療を専門にする診療所の新規開設が可能となりました。医療保険が保障する医療提供の公共性の見地からは、「例外的」な扱いとなります。

 看取りを含めた在宅医療の受け皿としての医療機関の数はいまだに十分とは言えません。それでも、この「在宅医療専門診療所」の数は近年増加してきています。

目次

1.在宅医療専門診療所の開設要件

1.無床診療所

2.在宅医療を提供する地域をあらかじめ規定し、その範囲を周知する。

3.2.の地域内の患者から往診または訪問診療を求められた場合、医学的に
 正当な理由なく断らない。

4.2.の地域内に協力医療機関を2か所以上確保するか、地域医師会から協
 力の同意を得る

5.2.の地域内で在宅医療を提供していること、在宅医療の導入にかかる相
 談に随時応じていること、診療所の連絡先などを広く周知する。

6.診療所の名称・診療科目等を公道から容易に確認できるように明示し、通
 常診療に応需する時間にわたり、患者や家族等からの相談に応じる設備・人
 員などの体制を整える。

7.緊急時を含め、随時連絡に応じる体制を整える。

 厚生労働省は、「直近1カ月の在宅及び外来患者の合計数に占める在宅患者割合が95%以上の診療所」を在宅専門診療所とみなしています。

2.在宅医療専門診療所の「在支診」の基準は厳しい

 在宅医療専門診療所が在支診の届出をする場合、通常の在支診の施設基準に加えて以下の実績が必要となります。

1.直近1年間に5か所以上の医療機関から文書で紹介を受けて訪問診療を開始

2.過去1年間の在宅看取り実績が20件以上

3.直近1カ月に在総管・施設総管を算定した患者のうち、施設総管を算定した患者の割合が7割以下

4.直近1カ月に在総管・施設総管を算定した患者のうち、要介護3以上または「特掲診療の施設基準等」別表8の2に掲げる厚労大臣が定める重症患者の割合が5割以上

3.在宅医療専門診療所にメリットはあるのか?

 看取りを含めた在宅医療の推進は医療政策の重要事項であるにもかかわらず、在宅医療専門診療所に診療報酬算定上のメリットはありません。

 在支診の届出には厳しい施設基準が設けられていますが、基準を満たしたとしてもインセンティブはありません(むしろ、減額されることがある)。

 つまり、在宅医療専門診療所にすることに経営的なメリットは少ないといえるでしょう。

さいごに

 在宅医療専門診療所には外来の負担がない分、特に重症の患者を診ることが要請されているとみることができます。つまり、在宅医療専門診療所には、外来診療と並行して在宅医療を行っている医療機関では対応が難しい重症患者を受け入れる「最後の砦」としての役割が期待されているということです。

 今後、在宅看取りを含めた在宅医療のニーズの増加に合わせて、現在低く設定されている診療報酬や、実績基準が見直されることが期待されます。