訪問診療専門の診療所を開設する~物件選び3つのポイント

訪問診療専門診療所の物件選びの3つのポイント

「開業しただけでは患者は来ない」はもはや常識になっていますが、医業経営も「お客=患者」に来てもらわなければ収益を上げることはできません。そのため、診療所開設において、「物件選び」は診療所経営の成否を決するといっても過言ではありません。

〇 いかに人通りの多い場所に開業できるか。

〇 いかに対象となる患者層が多くいる地域で開業できるか。

〇 いかに競合の少ない地域に開業できるか。

これらは、従来型の外来中心の診療所を開設する際の物件選びのポイントとなります。

しかし、訪問診療専門の診療所を開設する場合、これらの要素の重要度はあまり高くはありません。

では、訪問診療専門診療所の開設の場合、物件選びでは何がポイントになるのでしょうか?

【訪問診療専門診療所・物件選びの3つのポイント】

1.目立たない場所でも大丈夫

2.広くなくても大丈夫

3.駐車場

訪問診療専門診療所特有の事情に適した物件選びのポイントをおさえておけば、日々の業務の負担・フラストレーションの軽減を図ることができます。

物件選びのポイント1:立地(目立たない場所でも大丈夫)

よほど『集患』に自信がある場合を除き、従来のような外来中心の診療所(従来型)の開設では、「立地」は開業の成否に大きく影響します。

従来型の好条件:

①駅、バスなど公共交通機関でのアクセスが容易

②大通りに面した1F物件

③診療時間帯の人口が多いなどです。

訪問診療専門の診療所の場合、たとえ大通りから1本(あるいは2本)路地を入ったような立地であっても、2F以上の物件であっても、集患においては影響は少ないと言えます。

①②については、訪問診療は医療機関の側から「出向く」わけですから、診療所が目立つ立地であるかの重要度は下がります。むしろ、訪問診療に使用する車両の出入りがスムースかの方が重要です。

③については、保険医療機関と患家の所在地が16km以上離れている場合には、当該医療機関からの往診等を必要とする絶対的な理由がある場合に認められるとされているからです。

【絶対的理由とは?】

○患家の所在地から半径16km以内に患家の求める診療に専門的に対応できる保険医療機関が存在
しない場合

○患者の求める専門的な診療に対応できる保険医療機関が存在していても、当該保険医療機関等が
往診等を行っていない場合等

物件選びのポイント2:面積(広くなくても大丈夫)

従来型診療所は、まず「診察室」がなければ開設が認められることはありません。また、レントゲンなどの特別な検査機器を設置するには当然ながら基準に適合した専用のスペースを設ける必要があります。

これに対し、訪問診療専門診療所の場合は、「診察室」不要(’16~)。据置型の検査機器の必要もありません。そのため、物件選びの選択肢は従来型に比べて多くなります。

それでも、スタッフ1人当たりに換算したスペースは充分に確保しておきたいところです(目安1人当たり6~10㎡)。また、診療時間内は、患者や家族等からの相談に乗ったり、外部の連携先(訪問事業者など)の来訪を想定した物件選びをしたいところです。

物件選びのポイント3:その他

駐車場

訪問診療専門である以上、「いかに効率よく患家を回るか」が重要になります。

それには、移動手段としては「自動車」が必須となります。複数の医師(非常勤を含め)での訪問診療を考えているのであれば、複数台の自動車を駐車できるスペースが必要となります。訪問診療時に携行する診療材料などは決して軽くはありません。診療所~駐車場の往来は毎日のことになりますから、診療所と駐車場との距離や動線はしっかりと考える必要があります。

とくに、都心部では駐車場付きの物件は少ないですから、診療所の物件選択の選択肢が従来型と比べて広い分、「駐車場の確保ができるか」という視点から探し始めるのもいいかもしれません。

物品保管庫

訪問診療専門診療所の場合、前述のとおり、「診察室」「(レントゲンなどの)検査室」を設置する必要がありません。

そのため、物件選びに際しては、スタッフの「事務スペース(連携先などへの対応スペース)」と「作業スペース(物品保管庫など)」を十分に確保することが重点を置きます。とくに、「物品保管庫」はともすると「単なる物置」感覚で考えがちですが、診療カバンの補充作業の効率化や、在庫管理の観点からも、余裕のあるスペースを確保したいところです。

所在フロア

訪問診療専門診療所は、集患を目的とした路面物件(店)である必要はありませんが、日々頻繁に行われる移動車~診療所の荷物の運搬の負担を軽減するため1F物件はやはり魅力的です。また、低層階であっても2F以上の場合エレベーターは必須です。

さいごに

訪問診療専門診療所の開設でも「初期投資」を以下に抑えるかは従来型と同じです。

訪問診療専門診療所を開設する場合、従来型における「いわゆる好立地」である必要はありませんし、レントゲンなどの設置も通常ありませんから、そのための特別な工事も必要ありません。そのため、家賃や内装費用に関しては従来型に比べてかなり抑えることができます。

しかし、あまりに手狭な物件や駐車場との動線が悪い物件を選んでしまうと、日々の業務の負担やフラストレーションが大きくなります。また、「事業拡大に合わせて移転する」ことを考えていたとしても、実務をこなしながら移転先を見つけること、診療報酬上の移転範囲のルール内で適当な物件を見つけることは意外と難しいものです。

訪問診療専門診療所特有の事情に適した物件選びのポイントをおさえておけば、日々の業務の負担・フラストレーションの軽減を図ることができます。