自分で遺言書を作る前に知っておくべきたった1つのこと〜遺留分について
最近では、一般向けの相続関連書籍が充実してきたおかげで、遺言書の作成が随分と身近になりました。しっかりとしたものを選べば、文例も豊富に掲載されていますから、ご自身の事情にあったものを参考に遺言書を作成することも可能です。
ですが、いざ書き上げてみると、これで本当に大丈夫か不安になりませんか?
とくに、家族にもめてほしくないと思って遺言書を書く方ほど、そのような不安を持たれるようです。
その原因は、「遺留分」かもしれません。
今回は、『遺言書を作る前に知っておくべきたった1つのこと』ということで、遺留分についてご紹介します。
目次
こんな方に読んでほしい
〇 市販の書籍を参考に自筆証書遺言書を書きたい
〇 結婚資金や生活費の援助など、特定の相続人に特別な支出をしている
〇 相続財産を過度に期待している相続人がいる
〇 全財産を特定の相続人に相続させたい
〇 特定の相続人の相続分を多く(少なく)したい など
本当に相続人が主張できる相続分(権利)とは?
「姉さんは妻なんだから財産の半分はもらう権利がある」
「息子の俺には財産の4分の1は権利があるはずだ!」
ドラマや小説で時折このような場面を目にしませんか?
実はこれ、半分正解で、半分間違いなんです。
配偶者が相続財産の2分の1(半分)を、子(2人兄弟の場合)が4分の1相続する権利があるというのは、”あくまで”法定相続分【民法900条】でのお話です。
遺言書がない場合に行われる、「遺産分割協議」がまとまらない場合には、遺産分割方法の目安となります。
では、半分間違いとはどういうことでしょうか?
遺言書が作成されている場合、遺言者の意思を尊重して遺言書記載の内容に沿った遺産分割が行われればいいのですが、たとえば、遺言書に次のように記載されていたらどうでしょうか?
「全財産を晩年献身的に身の回りの世話をしてくれた長女Aに相続させる」
「妻に自宅不動産と金1,000万円。その他の財産は次男Bに相続させる」
相続分を指定されなかった相続人が、冒頭のように財産の半分(または4分の1)の権利を主張したくなるのも無理はありません。しかし、本当に相続人が主張できるのは、その半分(相続人が親の場合は3分の1)となります。
これが「遺留分」です。
遺留分【民法1042条】とは?
遺留分は、「相続の最低保証」と言われています。
遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律で、認められた相続財産への権利です。
配偶者・子が相続人である場合、法定相続分の2分の1について遺留分を主張することができます。
【相続人が、配偶者と子2人・相続財産の総額が5,000万円の場合】
法定相続分 | 遺留分 | |
配偶者 | 2分の1(2,500万円) | 4分の1(1,250万円) |
子 | 4分の1(1,250万円ずつ) | 8分の1(625万円ずつ) |
そのため、財産の全部を特定の相続人に相続させたい、慈善団体に寄付したい。あるいは、特定の相続人の相続分を多く(少なく)したい場合には、「遺留分」について十分に考えておく必要があります。
遺留分の計算の基礎となる相続財産といわゆる相続財産とは異なる場合があります。
遺留分の計算を行う場合、生前に行われた贈与についても価値評価を行い、相続財産に加えて計算をし直します。これを【持ち戻し】と言います。
これまでに、法定相続人に①婚姻に際して贈与を行っている(新築費用など)、②事業に援助している、③生活費の援助を行っている場合には、持ち戻しをして計算をする必要があります。
また、他の子に比べて学費を多く出している(医学部や大学院・留学かたや専門学校・高卒など)場合、本来であれば相続財産とはされない生命保険金もほかの相続人との間に著しい差が生じている場合にはやはり遺留分の対象となる場合があります。
遺留分を侵害された法定相続人は「遺留分侵害額の請求」【民法1046条】をすることで、遺留分侵害に相当する金銭の支払いを請求することができます。
※ この請求権を行使するかは、法定相続人に委ねられます。
そのため、「なぜ、そのような分け方をするのか」、理由・事情を付言事項や生前に説明しておくことで、財産をもらえなかった(少なくされた)相続人の権利行使を抑えるための対策を併せて検討します。
お心当たりがある場合には、ぜひ専門家にご相談することをお勧めします。
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