医療法人設立にはいくら必要なのか?
節税対策や分院展開、今後の医業承継にむけて医療法人の設立を考えているけれども、どうやら「財産の拠出」を行わなければいけないらしい・・・。
医療法人を設立するには資本はいくら必要なのか(出資しなければいけないの)?
今回は、医療法人の設立時の財産についてお話しさせていただきます。
目次
資本金の額は自由~具体的な金額は決まっていない
医療法人を設立するには、運営の原資となる資本を拠出しなければなりません。では、いくらくらい資本となる資金は必要なのでしょうか?
医療法人の設立について定められた、医療法では医療法人の設立時の資産について具体的な金額は示されていません。医療法人の設立時の財産について定められた医療法では以下のように定められ、具体的な金額は示されていません。
【医療法41条】
医療法人は、その業務を行うに必要な資産を有しなければならない。
2 前項の資産に関し必要な事項は、医療法人の開設する医療機関の規模等に応じ、厚生労
働省令で定める。
【医療法施行規則30条の34】
医療法人は、その開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務を行うために必要な施設、設備又は資金を有しなければならない。
これらの条文を根拠に多くの自治体では「おおむね2か月分の運転資金」を用意するよう指導しているようです。保険診療料の入金が翌々月ですので、そのあたりも関係がありそうです。
財産を拠出する方法と拠出できる財産の種類
1.財産の拠出方法
医療法では、財産の拠出方法として以下の2つが用意されています。ちなみに、医療法では「出資」という用語は使用しません。
基金
基金とは、医療法人の設立時に拠出される金銭その他の財産のことを言います。法人は、拠出者に対し定款で定めるところにより返還義務を負うことになります。また、返還にかかる債権には利息を付することができません。
寄附
寄附は、拠出者に対して返還義務を負いません。定款で「基金」の定めをしておかないと、拠出した財産の返還を求めることができなくなりますので、ご注意ください。
2.拠出できる財産の種類
医療法人の基金には、預貯金、医業未収金、医療機器や不動産などの資産(プラスの財産)を拠出することができます。また、借入金などの債務(マイナスの財産)も引き継ぐことができます。ただし、診療所の開設資金など引き継ぐことのできない債務もあります。ご注意ください。
さいごに
医療法人に拠出された財産は、院長個人の財産とは切り離されます。そのため、医療機関の支出に不自由を感じることがあるかもしれません。
財産の種類や院長個人のライフプランなど総合的に評価し、拠出するのか、賃貸借契約を結ぶのかなどの方法を選択する必要があります。
医療法人の財産についは定款で定めることになります。医療法人の組織(社員、役員)の条項同様(あるいはそれ以上に!)、医療法人の財産についての定款の条項については設立前に十分な理解が必要です。