医療法人の社員の選び方
節税対策、分院展開、そして、承継対策・・・。
医療法人の設立目的はさまざまですが、手続きやプロセスはほぼ同じ(①医療法人の運営方針を決定する組織をつくり、②医療法人の財産構成を決め、③医療法人の運営ルール(定款)をつくる)です。
その中でも、最も重要なのが①医療法人の運営方針を決定する組織をつくる(社員、役員の決定)です。
ここをあまり考えずに医療法人を設立してしまうと、後に思わぬトラブルを生じさせる原因になりかねません。
社員を選ぶ際に最低限知っておきたいポイントは3つです。
目次
社員は役員よりもえらい!
医療法人の組織でおさえておきたいのは、社員(社員総会)と役員(理事、理事長)の役割(権限)と関係です。
社員とは?
社員とは、従業員のことではなく、株式会社における「株主」に該当します。社員は総会を開催し、医療法人運営に関する重要事項について決定する権限を持ちます。
理事長や理事(役員)は、社員総会により選任され、医療法人の常務をします。
役員(理事、理事長)より、社員の方が立場は上!
以下は、医療法や定款で社員(総会)の決議事項とされているものです。
【社員総会の決議事項】(一例)
① 定款の変更
② 基本財産の設定および処分
③ 役員の選解任・変更
④ 社員の入退社
⑤ 社団の解散 など
医療法人の日々の経営判断は役員が行いますが、その役員の選任権(解任権)は社員が有します。つまり、医療法人の「支配権」は社員が持っているということです。
「1人1議決権」
社員と出資
医療法人の社員と株式会社の社員(株主)との大きな違いは、「出資の必要がない」という点です。1円も負担することなく、医療法人の社員になることができます。
社員は出資額の多寡に関係なく、「1人1議決権」となります。多くの医療法人は設立時の出資を行うのは院長(のみ)ですが、1億円を出資した院長と、一銭も負担していない社員と議決権(医療法人運営への影響力)は同じです。
【ここに注意!】
① 医療法人の支配権を確実にする
医療法人の設立には、社員が原則3名以上必要です。医療法人の安定的な運営、院長(理事長)の支配権の維持のためには社員の人数は最低限に抑えるべきです。
② 役員(理事)は社員でなくてもよい
複数の医療施設を運営する場合、各施設の管理者は理事にならなければなりません。しかし、理事となるべき管理者を社員にしなければならないという規定はありません。
経営に関与させたくない人間は入れない
医療法人の社員になるのに特別な資格は必要ありません。
① 自然人であること(会社などの法人は不可)
② 義務教育終了程度で、自分の意思で決定権の行使ができる程度の事理弁識能力を有すること
③ 欠格事由(刑事罰等)に該当しないこと
医師一人の診療所場合、社員3名(院長を除く残り2名)をだれにすべきかはしっかりと考えるべきです。外部のコンサルタント、身内といえども医療と無関係の兄弟姉妹を社員とすることには慎重になるべきです。
さいごに
社員選びがいかに重要なのかご理解いただけたでしょうか?
社員選びは円滑な医療法人運営の最重要ポイントです。人選を誤れば「乗っ取り」などのリスクを抱えることになります。医療法人を設立する際には、社員をだれにするかはもちろん、医療法人の「憲法」ともいわれる「定款」について理解し、必要であれば、書き方を工夫するするなど、対策をとることになります。