五感に障がいをもつ患者に遺言書を書きたいと言われたら

遺言書は書き方により、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類に分類することができます。

紙とぺんがあれば簡単に作成できることから、「自筆証書遺言」が多く活用されていますが、たとえば、視覚に障碍がある場合、字を書くことが困難な場合が多いかと思われます。自筆証書遺言は、その全文と日付、氏名を自書する必要がありますから、視覚に障碍がある場合、作成は困難となります。

そんなときには、「公正証書遺言」を利用することになります。

公正証書遺言を作成するには

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、元裁判官や元検事など法律実務に精通した法律のプロが作成した遺言書のことです。法律のプロが作成に関与するため、法的効果に瑕疵がない遺言の作成が望めます。

ただし、公証人はあくまでも「法律のプロ」であり、遺言能力に問題がないことまでも担保してくれるわけではありません。そのため、(法的に問題のない)公正証書遺言の有効性が裁判で争われるケースも少なくありません。

公正証書遺言は公証人が作成・保管するため、有効性や紛失改ざん等の心配がない反面、作成には立会人が必要となりますから、遺言の内容が立会人を介して利害関係人に知られてしまうというデメリットがあります。

手続き(作成の流れ)

1.遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する。

2.公証人が遺言者の口授を筆記し、これを遺言者と証人(2人以上)に読み聞かせ、または閲覧
  させる。

3.遺言者および証人が筆記の正確なことを承認後、各自これに署名押印する。遺言者が署名でき
  ないとき(視覚に障碍がある、手が震え筆記ができないなど)は、公証人がその旨を付記し署
  名に代えることができる。

4.公証人が、その証書が以上の手順により作成された旨を付記し、

必要な書類(一例)と費用

1.遺言者の印鑑証明と実印

2.証人の住民票

3.相続人の戸籍謄本、受遺者の住民票の写し

4.遺言執行者の住民票の写し

5.遺言の対象である財産に関する資料(不動産登記簿謄本や預金通帳など)

必要になる書類は、遺言書の内容により異なりますので、事前の確認が必要です。

費用に関しては、遺言書に記載する財産の額、相続人の人数により異なります。また、遺言者が傷病により寝たきりの場合は、追加の費用が発生しますが、自宅などへ出張をしてくれます。

なお、相談は無料です。

聴覚・言語傷害がある場合

聴覚・言語障碍がある場合、自書が可能であれば、自筆証書遺言の作成は当然可能です。

公正証書を作成する手順は、上記のとおりとなります。

ただし、聴覚・言語障碍がある場合、口授や読み聞かせに困難が生じますので、通訳者によること、筆談などにより行うことができます。

手が震えて自力で字を書くことが困難な場合

在宅医療を受ける患者さんの中には、脳卒中やパーキンソン病などですでに筆記が困難な方がいらっしゃるかも知れません。日常生活上の自筆の用はご家族やヘルパーさんに「添え手」をしてもらい、自書される方もいらっしゃるかも知れません。

自筆遺言書でも「添え手」によることが全く否定されているわけではありませんが、有効性は非常に厳格に判断されます。どうしても、「添え手をした介助者の意思」が問題になってしまうからです。添え手をした介助者が推定相続人や一定の親族にあたる場合はなおさらです。

この場合もやはり、公正証書遺言を作成するのがよいでしょう。

さいごに

在宅でのお看取りまで行う医療機関または訪問看護・介護の職員さんのなかには、お看取り後のご家族への心配(あるいは相続・遺言まで踏み込んだ事情)を相談される機会も増えてくるかも知れません。また、認知症を患った患者さんに遺言書が見つかった際に、ご遺族からの問い合わせに困ってしまう機会もあるでしょう。

顧問弁護士契約をしていない医療機関や訪問看護介護ステーションも多いかと思いますが、ちょっとした相続の知識が患者さんのさらなる安心につながるかも知れません。

また、在宅医療で今後お看取りまで計画しているのであれば、顧問契約とまではいかなくとも「すぐに相談できる法律職」を持っておくことをおすすめします。