困る相続~不動産問題

現在、日本国内には、所有者不明(転居などで連絡がつかない、相続未登記など)の不動産が九州の面積よりも広いという調査結果があります。

ここ数年、相続法関連での民法改正が積極的に行われています。

これ以上所有者不明の不動産を増やさないための法案が現在でも審議されています。

法案では、罰則も検討されています。

なぜ、このような問題が起きるのでしょうか?できる対策はあるのでしょうか?

目次

不動産登記とは

国内の土地は、一筆(国が定めた区画のようなもの。住所とは違う)ごとに、所在や面積、所有者などが細かく登記簿(不動産の名簿のようなもの)に記載されています。

「どの土地(建物)が誰のものか」ということを公的に証明するものになりますから、例えばマンションや土地を購入した場合には、「所有権移転登記」をしておかないと、誰か第三者に不動産を奪われてしまうことになりかねません。

被相続人の所有不動産を相続によって手に入れた場合には、相続を「登記原因」とする「所有権移転登記」が必要になります。

なぜ、所有者が不明になるのか

では、なぜそんなに大事な不動産登記がおろそかになってしまうのでしょうか?

権利関係の整理の負担

相続が発生すると、①相続人全員による、②遺産分割協議を行い、③必要な書類を作成・収集して手続きを行わなければならない

相続人が多い

相続が生じた都度の遺産分割の手続きを怠っていたがために、相続人が増えすぎてしまうことがあります。

親戚でも、いわゆる「縁戚」となれば、何年も顔を合わせたことがない(下手をすると、1度も会ったことがない)相続人同士が集まる、ましてや相続について話し合うのは相当困難です。

そうなれば、連絡をしない、話し合いがまとまらないで、また登記が放置される状況となります。

相続人が登記をしない

不動産は多くの場合、相続財産の中で大きなウェイトを占めますが、必ずしも「欲しい」財産ではありません。

特に遠方(地方)にある不動産の場合、資産価値も低く、維持費ばかりがかかるなど、相続財産の中の「問題児」になります。

いまできる対策

遺言書の作成

もっとも一般的な方法です。この場合、「付言事項」で、なぜ相続させたいのかを書き残すことも重要となります。

生前譲渡

お元気なうちに、相続人のどなたかに譲ります。

この場合、不動産の資産価値にかかわらず、「土地をもらった」という事実だけで遺産分割協議でもめる原因となりかねません。譲り渡す相続人以外にもしっかりと理由を説明するのが賢明です。

断捨離(処分する)

相続を円滑にするには、財産は最小限にしておくべきです。

特に不動産は分割が非常に面倒です。分けやすい現金に換えておくメリットは非常に大きいです。

さいごに

所有権の登記が上記のような理由により、現状に合致していない場合には、今のうちに専門家(弁護士や司法書士)の力を借りて整理をしておくべきです。

所有者不明の不動産をこれ以上増やさないためにも、相続人間のもめ事が起きないようにするためにも、今できることをしておきましょう。