在宅医療をつづけるために~生活保護の利用

年々、生活保護受給者が増加しています。特に高齢世帯での需給件数が増加しています。

つまり、在宅医療を最も利用する年代での生活保護受給者が増加しているということです。

在宅医療を受ける患者の自己負担額は、約5,000円~20,000円くらいでしょうか?

在宅での療養機関が長引くほど、患者さんにとっての経済的負担は大きくなっていきます。解決策の一つとして「生活保護の利用」が考えられます。

目次

生活保護(生活保護法)とは?

生活保護法の基本理念は、憲法25条(「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」)に基づいています。

国が生活に困窮するすべての国民に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行うことにより、最低限度の生活を保障することを目的としています。

保護の実施については、法律に定める要件を満たす限り、平等(保護の内容については個別的に判断)に保障されるとされています。

保護の種類と内容

生活扶助(12条)

衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの。金銭給が原則。

医療扶助(15条)

①診療 ②薬剤または治療材料 ③医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
⑤病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

現物給付が原則。

介護扶助(15条の2)

要介護者、要支援者、居宅要支援被保険者等に、以下の中から対象となる給付が行われる。

①居宅介護(居宅介護支援計画に基づき行われるものに限る) ②福祉用具
③住宅改修 ④施設介護 ⑤介護予防 など

現物給付が原則。

この他、教育扶助、住宅扶助などがあり、申請者の状況に応じ各扶助が組み合わされて支給される。

生活保護の手続き

1.事前相談

地域を所管する福祉事務所の生活保護担当を訪問。

2.保護の申請

申請者について、保護決定のための調査を実施。

・生活状況把握のための実地調査(家庭訪問)  ・就労の可能性
・資産調査  ・扶養義務者による不要の可否  ・社会保障給付や就労収入等

3.保護費の支給

厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から収入(年金や就労収入)を控除した額を保護費として毎月支給。

さいごに

申請・受給者が増加している反面、生活保護に対して「負のイメージ」を持つ方は少なくありません。

生活保護は国民の権利であり、生活のすべてを国の援助に頼る制度でもありません。経済的負担から、訪問診療の回数を減らす(あるいはやめてしまう)ことで病状が悪化してしまうことは避けなければいけません。

オンライン診療など、在宅医療を取り巻く環境は徐々に整備されてきていますが、利用者が十分に活用できなくては意味がありません。それは、公費制度も同じです。

特に、「老老世帯」は必要な情報にアクセスできない「情報難民」になりやすい傾向にあります。

今後、在宅医療を提供する医療機関は医療の提供や医療保険・介護保険の知識にとどまらず、公費負担などについても適宜患者さんに情報提供する役割を担っていく必要があります。