訪問診療専門診療所が抑えておきたい在宅がん医療総合診療料
在宅医療の診療報酬の基本は、①在宅患者訪問診療料 ②往診料 ③在宅時医学総合管理料の3つです。重症患者を積極的に診るのであれば、「末期がん」患者を対象とした点数である「在宅がん医療総合診療料」についても抑えておく必要があります。
重症患者対応をメインとする訪問診療専門診療所必須の知識です。
在宅がん医療総合診療料の算定のルールは、かなり複雑です。誤った運用をしてしまうと患者さんのデメリットになるだけでなく、監査の対象となりかねません。
目次
在宅がん医療総合診療料とは
在宅がん医療総合診療料は、居宅療養している「末期がん」の患者に対して、在支診(在支病)が、計画的な医学管理のもと総合的な医療を提供した場合に算定できる点数です。居宅療養をする癌患者は今後ますます増加していきます。また、重症患者に多く対応する専門診療所では必ず必要になる知識です。
対象となる患者は、通院困難な末期がんの患者になります。なお、「末期」の判断は、通院困難の判断と同様、医師の判断によるとされており、例えば「余命〜ヶ月」といった具体的な数字は示されていません。
在宅がん医療総合診療料は、訪問診療と訪問看護の費用を包括した点数となります。加算などは、細かいルールが有るため、算定に際しては、十分に留意すべきです。
算定要件
訪問回数が、歴週で(日曜日〜土曜日)訪問診療と訪問看護が各1日以上。合わせて週に4日以上あれば算定できます。
施設入居者に対しても算定できますが、看護師や医師の配置義務がある施設の入居者に対しては算定できません。
施設基準
○ 在宅がん医療を提供するための必要な体制が整備されている。
○緊急時の入院体制が整備されている。
○在支診または在支病の施設基準の届け出を行っている。
○居宅療養を行っている通院困難な末期がん患者に対して、計画的な医学管理のもとに総合的な
医療を提供できる。
○患者に対して、定期的に訪問診療および訪問看護を提供できる体制がある。
○患者の症状急変などにより、患者などから求めがあった場合に、常時対応できる体制がある。
患者のメリット
1.毎日の訪問が必要など、頻回の訪問が必要な患者にとっては、出来高算定の場合に比べて費用
が抑えられる。
2.訪問看護が医療保険となるため、介護保険を介護サービスにフルに使える。
費用を抑えつつ、手厚いサービスを受けられる点で患者へのメリットは大きいですが、それは同時に医療機関の収益が減ることも意味します。
算定する場合の留意事項
訪問回数の算定
訪問診療と訪問看護を同日に行った場合、同日に複数回の訪問を行った場合、訪問回数と訪問日数のカウントには注意が必要。
外部の医療機関等と連携している場合
在宅がん医療総合診療料は、主治医の医療機関しか算定ができません。そのため、外部の医療機関や、訪問看護ステーションと連携して患者のケアに当たっている場合には、診療報酬の按分等は合議で行うことになります。
この場合、事務の手間はもちろんですが、自院に十分な診療報酬が入らない場合もありえます。