相続税の計算において、受けることができる控除の中には、遺産分割協議が終了していることが要件となているものがあります。
また、相続開始後3カ月以内に相続について、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択しなければなりません。原則として、一度選択した相続の方法を後の変更することはできません。
そのため、相続財産の調査を早いうちから始めなければなりません。
相続財産の範囲(民法896条)
相続人は相続開始のときから被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。相続人に包括承継される権利義務のことを「相続財産」といいます。
ただし、被相続人の一身に専属し、他人が取得または行使することができない権利である「一身専属権」(扶養を受ける権利、障害年金等)や、被相続人の死亡により発生するが相続人等の固有の権利(生命保険金、死亡退職金等)は、相続財産ではありません。
※ 生命保険金、死亡退職金は、相続税では「みなし相続財産」として、「課税財産」となります。
祭祀財産(民法897条)
系譜(家系図等)、祭具(位牌、仏壇など)及び墳墓(墓石、墓地、墓地使用権等)は「祭祀財産」として、相続財産とは区別され、祭祀を主宰する者が承継します。この祭祀主催者は遺言により指定することができますが、指定がない場合には慣習によることとなっております(慣習がない場合は家庭裁判所が決定)。
この祭祀財産は、相続税法上「非課税財産」となります。
※ 祭具であっても、嗜好性が強いもの、芸術的なものなど財産的な評価が可能なものについては、課税対象となる場合があります。
みなし相続財産
民法上は相続や遺贈により取得した財産(本来の財産)でなくとも、実質的には相続等により財産を取得したのと同様の経済的効果があると認められるときには、公平の観点からその受けた経済的利益を相続等により取得したものとみなし、相続税の課税財産に算入することとしています(みなし財産)。
【みなし財産の例】
① 生命保険金、生命保険契約に関する権利
② 死亡退職金
③ 定期金に関する権利 など
被相続人の死亡によりこれらの権利が生じた場合、相続税の計算においては(本来の)相続財産にこれらの権利を加えた額を課税対象とします。
債務について
相続が開始されますと、被相続人の一身に属した権利義務の一切を承継することになります。つまり、預貯金や不動産などのいわゆる「プラスの財産」はもちろんのこと、借入金や保証人契約も承継の対象となります。
債務が過大な場合には相続放棄(相続開始から3カ月以内)の検討も必要となります。相続財産の調査の際は債務についても忘れずにお調べください。
【ここに注意!】
債務については、相続人全員で負担します。
遺産分割協議の結果、特定の相続人が債務の全部を負担(相続)することを相続人間で決定したとして、その効果はあくまでも相続人間にのみ生じ、債権者に主張することはできません。特定の相続人のみが債務を負担する場合には、債権者の承諾が必要となります。
つまり、債務については法定相続分に応じて各相続人が負担することになります。