相続人の順位
ここ数年の「終活ブーム」の影響からか、遺言書を書く人は年々増加しているように思います。
それでも、大半の方は遺言書を書かずに(あるいは、せっかくの遺言書が発見されないまま)相続の手続きを行うことになります。
(遺言書が発見されなかった場合を含め)遺言書がない場合、相続手続き(名義変更等)をするにあたり、相続人全員による「遺産分割協議」を行う必要があります。
相続人のうちのどなたかお一人でも欠けていると、せっかくの分割協議も「無効」となります。
そのためには、相続人の範囲と順位をしっかりと理解しておく必要があります。
目次
相続人の範囲と順位
配偶者(婚姻届けを提出している場合に限る)は、必ず相続人となり、相続順位1~3位の方がいる場合には、共同相続人として遺産分割協議を行うことになります。また、上位の相続人がいる場合、下位の相続人に相続権はありません。
相続順位第1位 子・孫(直系卑属)
被相続人より先に子が亡くなっている場合には、孫がその子(孫にとっての親)の相続人たる地位を承継します。(これを「代襲相続」と言います。)
相続順位第2位 両親・祖父母(直系尊属)
被相続人に子がない場合、両親が健在であれば、両親が相続人となります。
相続順位第3位 兄弟姉妹
被相続人に子がなく、すでに両親も他界している場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。また、兄弟姉妹にも代襲相続の規定が適用されます。
また、包括遺贈を受けた方も遺産分割協議に参加しなければなりません。
遺産分割協議に参加できない相続人がいる場合
遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、以下の方は分割協議に参加することができません(以下の方が参加して成立した分割協議は無効となります)。
未成年者がいる場合
未成年者が法律行為を行う場合、法定代理人(通常は親)が本人に代わり意思表示をすることになります。
しかし、相続において親と未成年の子が共同相続人となる場合、一部の例外を除き、「利益相反」関係になるとして親は代理権を行使することができません。この場合は、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらうことになります。
行方不明の方がいる場合
相続人の中に行方不明の方がいる場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらうことになります。
また、7年以上生死不明の場合には、「失踪宣告」を家庭裁判所に請求することも考えられます。行方不明から7年を経過した日に死亡したとみなされ、代襲原因となります。
判断能力が十分ではない方がいる場合
認知症、精神障害、知的障害の方が該当するかと思います。
この場合、成年後見人を家庭裁判所に選任してもらうことになります。
最近では任意後見制度も周知されており、ご契約されたかたもいらっしゃるかもしれません。ここで注意したいのが、任意後見の場合、ご子息を任意後見人にしていると、共同相続となったときに「利益相反関係」となり任意後見が役に立たないということです。
さいごに
遺言書の作成は、①相続によるトラブル(争族)の回避と②相続手続きの面倒の回避といった2つ役割があります。
最近では、お子様のいないご夫婦、独身の方など、財産の金額と同じくらい、相続人調査の漏れによる「誰が相続人か」でトラブルになることがあります。
親戚付き合いが疎遠になっていると、従来のように配偶者と子が相続という場合と異なり、子がいない場合などは、一度もあったことのない被相続人の甥や姪と分割協議を行わなければならない精神的な負担が大きくなっています。
生前にできること
1.遺言書を書いておく
遺言書で「誰に何を(いくら)相続させる」としっかりと書いておく。そして、必ず見つけてもらえるようにしておく。(法務局での保管制度の利用、公正証書遺言の作成、信頼できる人に預けておくなど)
2.エンディングノートの作成
遺言書を書くにはまだ早いとお考えの方でも、エンディングノートに家系図や親戚関係を書いておくだけでも相続人調査が楽になります。
相続人調査に漏れがあると、遺産分割協議が無効になるだけでなく、無用のトラブルの原因ともなりかねません。遺産分割協議を始める前に相続人の調査だけでも専門家に依頼することもご検討ください。