持分あり医療法人の理事長の相続対策

医療法人の相続の場合、大きく分けて2つのポイントがあげられます。

ひとつ目は、相続財産が高額になる傾向が強いこと。

ふたつ目は、医師や歯科医師以外は理事長を継ぐことができない点です。

今回は、持分のある医療法人の相続対策として3つご紹介します。

1.納税資金対策

クリニックを個人開設から法人開設にすることによって、医療資産が個人の財産から分離されるため、相続税を抑えることができます。また、後継者がいる場合には、確実に医療資産を譲渡することができます。

しかし、「出資持分」だけは相続財産となります。

医療法人の理事長の相続で最も高額になる恐れがあるのがこの出資持分です。

納税資金対策として最も有効なのが、「生命保険」の活用です。保険料は最大で2分の1が損金とすることができるので、2.の「持分評価の引き下げ」にもつながります。

2.持分対策

持分の評価の引き下げ

出資社員は、退社の際に医療法人に対して「持分払戻請求」をすることができます。

請求できる払い戻しの額は、退社時における法人の財産評価額に、同時点における総出資額中の当該社員の出資額占める割合を乗じて算定されます。

つまり、いかにして法人の財産評価額を下げるかがポイントになります。

方法としては、①退職金の支給 ②損金算入できる大規模修繕 ③損金算入できる生命保険の活用などがあげられます。

持分を減らす(譲渡)

医療法人の後継者候補に理事長の持分を贈与・譲渡していきます。

贈与であれば、年間110万円までは贈与税を負担する必要はありません(暦年課税)。また、今後も持分の資産価値が上がると見込まれる場合には、「相続時精算課税制度」の利用を考えることもできます。

贈与での持分移転をするのであれば、中長期的に計画的に行う必要があります。

贈与・譲渡いずれの場合も、できるだけ持分の評価額が低いうちに始めることがポイントになります。

また、後継者候補に持分を集中させることです。医療法人経営に関与しない相続人などに持分が渡ると、後々払戻請求権の行使などで問題となる場合が考えられます。

持分なし医療法人への移行

定款の変更により、持分のない医療法人に移行すれば、相続における持分の問題はなくなりますが、持分の放棄は医療法人の利益とみなされ、医療法人の側に贈与税が生じることがあります。

3.遺言書の作成

どんな事業や不動産の経営であっても、それがいかに困難で、ストレスになるのかは残念ながら相続人全員に正しく伝わるとは限りません。どうしても相続財産の「収入」面ばかりに目が行ってしまうものです。

医療法人を承継する相続人とそうでない相続人に平等に相続させることは簡単ではありません(そもそも平等な相続などありえません)。せっかく跡を継ぐことを決心してくれた相続人が、遺言書がないばかりに分割協議に参加せざるをえなくなり、最悪の場合、承継を断念する可能性もあり得ます。

遺言書を作成することで、財産の行き先を明確に指示することは必要です。

さいごに

現在、新たに設立することができる医療法人は「持分なし医療法人」のみです。

さまざまな要因がありますが、①高額の相続税の手当ができず、医療法人を解散してしまうことを回避する(地域医療の確保)、②持分払戻請求による医療法人の財政への影響を減らすという側面も少なからずあります。

医療法人の理事長の相続対策はこのほかにも、医療法人の存続の意思、後継者の有無、相続財産の構成や相続人の構成により考えなければいけないことがたくさんあります。

お元気なうちから顧問税理士など専門家の意見を参考に、相続対策をご検討ください。