開業医の医業承継と相続

 医業承継には大きく分けて4つのパターンがあります。

個人開設法人開設
親族間承継AB
第三者承継CD

 スムーズな承継を実現するためには、中長期的な計画に基づいて準備を行う必要があります。

 それぞれに、気を付けるべき点は異なりますが、共通するのは承継人に確実に医療資産を引き継ぐことです。

目次

医業と一般事業の承継における違い

1.医師以外に承継することが難しい

 一般の事業の承継との最大の違いは、「医師以外への承継は原則行えない」ということです。とくに個人で開設している場合、親族の中に医師免許をお持ちの方がいらっしゃらない場合、ほぼ不可能です。

 医療法人の場合、医療機関の管理者は医師あるいは歯科医師でなければなりませんが、理事長は必ずしも医師や歯科医師である必要はありません(非医師であることのみをもって申請を却下することはできません)

 非医師が理事長に就任できる一定の基準は示されていますが、それでも医師以外の方が理事長に就任できる可能性は低いと言わざるを得ません。

2.「持分」≠ 株式

 いわゆる「持分あり医療法人」の場合(平成19年4月1日以前に医療法人を設立している医療法人のほとんど)、設立時に「持分」というかたちで出資しているはずです。

 持分は株式とは異なり、相続の対象とはなりません(出資額相当額分のみ相続の対象)。また、社員たる地位も相続の対象とはなりませんので、相続人が医療法人の経営権を承継することはありません。

【注意点】

 社員は退社時に「持分払戻請求権」を有します。死亡は社員の退社理由になりますが、この請求権自体は相続の対象とはなりません。しかし、社員が請求権の行使をしないことを明確に表明していない場合、持分相当額が相続財産とされてしまうことが考えられます。

さいごに

 個人開設の診療所の場合、医業承継のために医療法人を設立することはたいへん有効です。そのためにも医業承継は、中長期的な視点で計画的に行う必要があります。

 そして、医業承継成功のためには、承継人候補とのコミュニケーションを図り、承継に対する互いの認識を合致させることがなによりも大切です。