在宅医療と医療政策

在宅医療の将来性

1.医療費の抑制

 2025年以降、超高齢社会となり、医療の提供を受ける必要のある人口も当然増加します。国家の歳費における医療費のウェイトは年々増加の一途を辿っていますが、「支える世代」の減少という問題を抱える中、いかにして医療費を抑制するかは大きな問題です。

 入院(一般)・・・約50万円/月

 在宅(介護保険と併せて)・・・約20万円/月

 あくまでも参考の金額ですが、1カ月当たりの医療費で比較すると、1人分の入院費用は2~3人の在宅医療に相当します。

 社会保険料の効率的な分配を行うためにも、在宅医療の充実は必要不可欠となります。

2.病院機能の見直し

 医療資源の有効活用という観点から、病院機能の見直しも政策課題となります。特に大病院の機能を急性期医療や高度医療に特化することが検討されています。

 病院の機能が見直されれば、従来の回復・療養に充てられていた病床も減少します。在宅医療はこのような回復・療養の場としての機能がますます期待されます。

 現在推進されている在宅医療政策は診療所や、病床数が200以下の中小病院を中心に構成されています。

3.在宅医療の診療報酬

 在宅医療の推進には医療費の抑制という側面がありますが、在宅医療における診療報酬は外来と比較しても高い水準で設定されています(月2回の訪問・要介護のモデルで1人当たり約5万円/月)。

 また、算定できる項目や加算項目も改定の都度、増加・増額されています。

まとめ

 高い水準の診療報酬や、受ける側の意識によって在宅医療(訪問診療・往診)を取り入れる医療機関の数は増加していますが、重度の患者や看取りに十分に対応できる医療機関はいまだ十分とは言えません。

 院長おひとりが診療にあたる小規模の診療所で在宅医療を始めることは容易ではありません。在宅医療の受け皿となる医療機関の数が十分ではない地域では、近隣の医療機関を競合というよりも協力者と考え、地域全体で支える医療の提供を考える必要があります。