基金について

 「基金制度」とは、「剰余金の分配を目的としないという医療法人の基本的性格を維持しつつ、その活動の原資となる資金を調達し、その財産的基礎の維持を図る」ための制度です(平成19年3月30日医政発第0330051号「医療法人の基金について」)。

1.基金はいくら必要なのか

 医療法41条1項には、「医療法人は、その業務を行うに必要な資産を有しなければならない。」と定めれています。また、同条2項には、「前項の資産に関し必要な事項は、医療法人の開設する医療機関の規模に応じ、厚生労働省令で定める。」と規定しているだけで、明確な金額は示されていません。

 自治体によっては、「2か月分」の運転資金を要しすることを指導しているところもあるようです。保険診療を行う場合、翌々月に支払われることを考慮してのことではないかと思われます。

 基金に拠出された財産は、一定期間返還されませんので、その間、拠出者個人(多くの場合は院長先生)の資金繰りに影響してきます。そのため、拠出する金額はできるだけ少額に抑えることをおすすめします。

2.基本財産と通常財産

 医療法人に拠出する財産は「基本財産」「通常財産」の2つのパターンがあります。医療法人のベースとなる重要な財産(不動産など)については基本財産とすることが望ましいとされています。しかし、基本財産としてしまうと、処分するのに定款変更を必要としたりと、手続きが煩雑となります。
 基本財産を「なし」にすることも可能です。

3.拠出財産について注意したいこと

 拠出する財産は、一時的であるにせよ所有権を医療法人に移転することを意味します。医療法人の運営方針如何によっては、設立時に想定していたよりも拠出財産の返還時期が後ろ倒しになることも考えられます。
 

負債について

 設立時にはマイナスの財産(負債など)の拠出をすることもできます。個人時代に行った、クリニックの改装工事や医療機器の購入にかかる借入金は、そのまま医療法人で使用する場合であれば、拠出することが可能です。

1.個人時代の負債を引継ぐ場合

 債務個人から法人に引き継ぐ場合、その契約自体を引継ぐことになりますので、債権者の同意が必要となります。

 拠出する財産の取得に要した借入金は、設立後の法人に引継ぎ、法人で返済することができますが、引き継ぐことができない借入金(たとえば、運転資金)については、給与所得で返済していくことになります。
 個人が引き続き返済する必要のある金額相当分を役員報酬に上乗せする方法が一般的ですが、その場合には当然、課税所得が増えることになります。

2.引き継ぐことのできない負債

 「運転資金」にあてた借入金を引継ぐことはできません。運転資金は拠出財産の取得に使用したと評価されないからです。事業所得の利益の一部になっている可能性もありますし、生活費の一部となっていることも考えられるからです。「負債の従前の所有者が当然負うべきもの」については、医療法人の負債として認めることは適当ではないとされています。

 また、医薬品診療材料や、建物賃貸借の保証金などについては、自治体によって拠出できるものとできないものとの判断が異なるものがあります。事前の確認が必要です。

残余財産について

 医療法人の場合、売上(医業収益)から諸費用を支払い、各税金を支払った後の「当期純利益」は基本的に内部留保となります。医療法人は利益配当が禁止されているため、設備投資や役員などの退職金の準備金とすることになります。

 現在、新たに設立することのできる医療法人の形態はいわゆる「持分なし医療法人」のみです。持分なし医療法人は、解散時の残余財産について、役員や社員に分配することができません。