診療圏調査とは?

1.診療圏調査の目的

 診療圏調査は、クリニックを新たに開設した場合、「どのくらい患者差を見込めるか」を、客観
的に評価するためのものです。

 医療機関への融資の実績がる金融機関であっても必ずしも医療機関の経営についての知識が十分
にあるわけではなく、ましてや新規にクリニックを開設するドクターの経営者としての実力がわか
らないため、診療圏調査の情報をそのまま審査資料とする金融機関もあります。
 金融機関も独自の診療圏調査を行うことが通常で、その場合の数字はかなり固いものとなります。
そのため、融資を依頼する側も診療圏調査は手堅い数字で行うことになります。

 しかし、「診療圏調査上で、多数の患者が見込める」という情報は、資金調達段階では現在でも
有効なツールとなりえます。

2.診療圏調査の方法

 診療圏調査はなにも医療機関を開設する場合だけに使われるわけではありません。商店や美容院
など、通常お客さんの来店を前提としている業種では、開業前には一般的に「商圏調査」として行
われているものです。

 診療圏調査は、以下の手順で行われます。

【診療圏調査の手順】

① 地図上に円を描く。

 まず、地図上に候補地を中心に患者さんの動く範囲を想定した円を描きます。円の半径は診療科
目によりおおよそ決まっており、一般的な内科であれば500m、耳鼻科や皮膚科であれば1,000m。
精神科であれば2,000mとされています。
 専門性の高い診療科目ほど診療圏を広く設定することができます。

② 円の中に(見込み)患者がそのくらいいるのか調べる。

 次に、「仮想診療圏」ないにどのくらい患者さんとなる見込みのある住民がいるかを調べます。
 市町村が公表している「町丁別人口データ」をもとに、その診療圏の人口を特定します。そこに
厚生労働省が公表している「受療率」を掛け、1日当たりの診療圏内の患者数を算出します。

つまり・・・

見込患者=診療圏内の人口×受療率

 この見込患者数を、おなじ診療圏内にある競合となる医療機関と分け合うことになります。

③ 数字を補正する

 ②までの調査で得られた数字にいくつかの要素を加味していき、調査の精度を上げていきます。

3.診療圏調査の精度を上げる

① 競合医療機関

 診療圏調査での競合は、おなじ標榜科目を掲げている医療機関をすべてピックアップして行いま
すが、たとえ同じ規模のクリニックであってもまったく同じに評価できない場合があります。

加算ポイント減点ポイント
・ 同じ土地で代々開業している(抜群の知名度)。
・ 医療モール内にあり、通院が
  しやすい
・ 著名なドクターが在籍してい
  る
・複数掲げている標榜科のひとつで、重 点をあまりおいていない
・院長がすでに高齢で数年後の閉院が予想
 される

② 都市計画

 市役所などに出向くと、今後10年程度の周辺の都市計画を知ることができます。候補地の人口
構成が今後どうなるのか、住民の生活動線を変えるような開発計画があるのか。

③ 住民の意識

 もともとの街の成り立ちや学区割りなどにより、「地図に現れない壁」が存在している場合があ
ります。自治体が合併している場合、昔からの住宅地と新興住宅地など。診療圏調査の結果を踏ま
えて、じっさいに現地に足を運ぶことでわかることは意外に多いです。

④ 地理的要因

 ③とは異なり、「地図で確認できる壁」です。
 複数車線のある
環状道路や踏切。川が流れていて、往来に不便感がある。このような場合は、円の中にあるエリア
であっても、多少期待値は下げるべきです。

⑤ 昼夜人口

 開業候補地がビジネス街の場合、日中の人口は上げりますし、逆に住宅地であっても通勤などで
昼間は人口が減少するエリアもあります。
 昼夜人口にひらきがあるエリアの場合、診療時間や診療日を工夫する必要があります。

診療圏調査報告書で注意すべきポイント

① しっかりと補正がされているか

 候補地に特有の事情をしっかりと検討し、補正が適切に行われていない場合、思わぬ計算違いが
生じ、スタートで躓く原因となります。
 診療圏調査のとおりに患者が集まることは稀ですが、資金調達のための事業計画もこの診療圏調
査をベースに行いますので、あらかじめしっかりと調査をし、できる限り精度を上げておく必要が
あります。

② 診療圏の設定は適切か

 メインとする標榜科目に見合った診療圏の範囲が設定されているか。
 

 診療圏調査はあくまでも、”期待値”です。
 調査で得られた数字をもとに資金調達のための事業計画を立てたり戦略を組み

立てていきます。