日本国内に生活の基盤を有する外国出身の方は年々増加の意図を辿っています。在留外国人の数が
増えるにしたがって、その出身国(国籍)も多様になっています。

 たとえば、風邪をひいてしまったり、けがをした場合、何となく体調がすぐれないなどの場合、彼ら
(彼女たち)も当然、生活圏にある診療所を利用することになります。

 そのとき、不安なのは「言葉の壁」ではないでしょうか?
 大きな病院などは常時専属の通訳が言語に応じて何人か配置されており、適切な対応をしてくれるこ
ともありますが、小規模の医療機関ではそのようなわけにはいきません。

 日本人の人口が減少する中、増加する外国人に対応できることは、診療所は今後の集患対策の重要な
テーマになりそうです。

診療所内外の案内看板

 漢字圏やいわゆる在日韓国人の方を除けば、約60%の外国籍の方は漢字を読むことができないか、困
難とされています。

 診療所前の看板や、院内(エントランス)の案内が日本語のみの表記であると、それだけで受診を
控えてしまうケースもあるようです。

 通常の日本語、英語に加えて、地域の特性に応じて+1か国語(スペイン語、特定のアジア圏で使用
されている言語など)の表記をするなどの工夫が必要となります。

英語は通じない!?

 普段から外来・入院で外国籍の方の治療・看護にあたる医療関係者の中にも外国出身の患者さんとの
コミュニケーションに苦労する場面は多いようです。

 理由の1つに、自分の英語力に自信がない場合が多いようですが、実は、日本に在留する外国人の中
にも英語はそれほど話せないという方が多いことがあげられます。日本語以外の言語で望む言語では「
英語」を選択する方が最も多いのですが、半数以上はその他の言語(スペイン語、中国語、その他ア
ジア圏の言語)の方が理解できるようです。

 また、比較的英語に堪能な医師や職員が対応したとしても、専門的な単語(病名や薬の説明)になる
と患者さんの側が理解できなということもあります。

 「多言語問診票」や「「多言語診療会話集」「多言語受診ガイド」をうまく利用することが重要です。

通訳の利用

 より正確に多くの情報を得て、診療を行うには問診票や診療会話集では限界があります。
 その場合、やはり通訳を検討すべきでしょう。しかし、事前の予約が必要だったり(特にマイナー言
語の場合)、費用の面、通訳の能力の担保など便利とはいい難い状況です。

通訳の種類

① 自治体やボランティア団体

 コストが比較的安価だったり通訳スキルに一定の担保が期待できますが、人数の確保が難しく、すぐ
に利用できない場合があります。

② 友人・家族

 外国出身の患者さんの多くは、同じ国の出身者同士で独自のコミュニティを形成しています。そのな
かで日本語が比較的上手な友人を伴って来院する場合があります。しかし、「通訳」としての能力に不
安が残ります。なによりも病気のことについては非常にデリケートな部分でもありますので、注意が必
要です。

 日本の学校に通っているお子様の場合、日本語でのコミュニケーションは問題のない場合があります
が、心理的な負担が大きくなることが考えられます。できれば控えるべきでしょう。

③ 職場の人など日本人の知り合い

 この場合、コミュニケーションに問題はありませんが、非常なデリケートな内容なだけに個人情報保
護の観点からもお勧めできません。

誤訳と医療過誤

 通訳の誤訳によるトラブル(医療過誤訴訟など)の前例は少ないとされています。しかし、なにかし
らトラブルが生じれば、基本的には医療機関側の責任問題になりそうです。

 しかし、より正確な情報の収集や、説明にはやはり通訳は非常に便利なツールとなります。外部の通
訳を利用する場合には、事前に責任関係をできる限り明確にすることが重要となります。

 また、不測の事態に備えて「医師賠償責任保険」の内容の確認をしておくべきです。