2040年が外来のピーク

 医療機関は対面による診療が基本になります。

 そのため、クリニックの開業場所をどこにするのかは、クリニック経営が成功するか否かを決定
づけます。残念ですが、少子高齢の人口構造では、2040年が外来患者のピークと言われています。

 クリニック開設にとって「良い場所」は、競合はもちろん、他業種にとっても魅力的な場所です。
しかし、一見よく見える場所が、本当にクリニック開設に適しているのかしっかりと見極めること
が大切です。

1.エリア選定  ~メリットとデメリットを比較

 開業エリアと聞いてどんな場所を真っ先に思い浮かべましたか?

 現在(かつて)勤務している病院の近くでしょうか?

 お住まいの周辺でしょうか?

 開業を目指すドクターが考える開業エリアの基準はみんな同じだと思ってください。しかし、クリ
ニック経営を失敗させないためには、開業地の選定こそ柔軟に考えてください。

「都市部」or「郊外」?

都市部開業郊外型開業
主なメリット利便性が高い
 ・ 生活面、教育面
 ・ 研修等スキルアップ面
人口が多い(増加している)
老年人口の増加が見込まれる
競合が少ない
 → 立ち上がりが早い
診療圏が広い
運営コストが安い
自己所有物件
主なデメリット競合が多い
診療圏が狭い
運営コストが高く、利益率が低い
(土地・家賃、人件費等)
生活、通勤に不便
直接得られる情報少ない
職員採用が難しい
老齢人口の停滞
 → 人口減少は確実

 都市部では競合が多くなりますが、それでも人口や対象患者の数も多いこと、またスタッフの採用
が比較的容易という点ではメリットがあると言えます。しかし、都市部での開業はコスト(特に固定
費)がかかりますし、開業すれば患者が集まるという保証はありません。スタッフの採用についても
自院以外の選択肢もいくらでもあるということになります。

 郊外型の特性は、都市部と反対になることが多くなります。診療圏を広くとることができる分、集
患が期待できること、コストが抑えられることなどです。逆にデメリットは、どうしても不便さが残
るという点です。とくにスタッフの採用についてはなかなか良い人材に巡り合えないかもしれません。

 郊外の人口推移については、都市部以上にシビアに検討する必要があります。外来患者数のピーク
は恐らく都市部よりも早く訪れます。

 

「駅前」or「住宅地」?

 おおよそのエリアを決めた後は、より具体的に開業地を駅前にするのか、住宅地にするのかを決め
ていくことになります。

駅前立地住宅地立地
主な
メリット
利便性が高い
集患に有利
テナント物件多い
通勤しやすく採用に有利
調剤薬局が多い
競合が比較的少ない
独立した居住圏から来院がある
運営コストが比較的安い
近隣での採用がしやすい
主なデメリット競合が多い(将来も)
 → 競合に勝つ優位性
運営コストが高く利益率が低い
周囲に目立つ店舗が多いと埋もれてしまう
運営、通勤に不便
駅利用の職員が採用しにくい
認知されるまでの時間
適当な物件が少ない
調剤薬局が少ない可能性

 「駅前立地」と「住宅地立地」の比較は、「都市部」と「郊外型」の比較に少し似ています。

 どのようなクリニック運営にしていくのかという戦略的なしてんから、開業場所はある程度絞るこ
とができます。完璧な場所は存在しません。

 開業することを決めたときに作り上げた自院の「理念」に照らし、メリットを生かした運営をして
いくことになります。

「診療圏調査」

 「診療圏調査」とは、簡単に言うと開業候補地に「どれくらいの需要があるのか」を調査するもの
です。

 いくつか候補地が浮かび上がった段階で、順次「診療圏調査」を行っていくことになります。クリ
ニックの「ウリ」に合致する患者がどれくらい候補地にいるのか。さまざまな要素を加味しながら行
っていきます。

 診療圏調査はあくまでも、当該エリアの可能性を数字にしたものです。確実にその数の患者が集ま
る保証はありません。

2.開業スタイルを考える

「戸建て」or「テナント」

1.戸建てクリニック

 戸建てのクリニックを検討する場合、3つのパターンがあります(①土地を購入する、②土地を借
りる、③建貸し)。

 ①土地の購入は、よほど資金に余裕がない限り見送るべきです。必要な面積の確保も難しいですし、
万が一健康面の事情や経営がうまくいかなくなった場合、医療施設は資産価値が低く評価されてしま
います。また、②土地を借りる場合は、契約期間の問題があります。つねにリスクを頭の片隅に入れ
ておくことはとても大切なことです。

 ③の建貸しは土地の所有者がドクターのために土地を貸し、建物まで建てて賃貸する形態です。契
約期間は土地所有者が投下資本を回収するまでの期間を考慮して、比較的長期になる場合が多いです。
あとは、更新ができるかの確認をしておく必要があります。

2.ビル診療所

 ビル診療所とは、いわゆる「テナント」タイプの診療所ことです。都市部での開設を検討している
場合、このタイプが多くなります。

 ① スケルトン仕様

 天井、床、壁がむき出しの状態の物件です。内装費用は掛かりますが、設計や各種の設備工事の自
由度は上がります。

 ② 事務所仕様

 天井、床、壁や照明、空調などすでに一通りの設備が整っている物件です。一見すると、内装費用
が抑えられそうですが、医療機関特有の設備を配置するのに一度既存の設備を解体する必要もあり、
慎重に検討する必要があります。

 ③ 医療モール

 クリニックの入居を前提に作られた物件です。そのため、事務所仕様のような余計な工事費用がか
からないことが多いです。また、医療モールの場合、診療圏調査をしっかりと行っていることが多い
ので、潜在的な患者数には期待できます。
 医療モールの場合、他の診療科目の相乗効果を期待することもできますが、ひとつのクリニックの
評判が全体の評判につながりかねないことも忘れないでください。

 

3.物件はどこで探す?  ~物件選びのポイント

物件はどこで探せばいいのか

① 地元の不動産業者

 地元の不動産業者などは、土地の事情に通じている場合が多いので、有用な情報を得ることが期待
できます。反面、不動産業者によっては「医療機関用」の不動産に求められる条件に明るくないこと
が多いです。また、業者によってはそもそも住居用の不動産しか扱っていない場合もあります。

② 製薬会社や医療機器業者

 開業のサポートをしている製薬会社や医療機器業者もあります。そのようなところであれば、医療
機関向けの不動産の情報を多く抱えている場合もあります。病院出入りの業者にそれとなく話をして
おくのもいいかもしれません。

物件選びのポイント(住まい選びとは違う)

 物件選びで一番気を付けたいのがここです。広さや立地ばかりに気を取られていると、思わぬ出費
を強いられる可能性があります。また、最悪クリニックとして全く使えない物件だったということに
もなりかねません。

① 天井高   天井までの高さが2.4m以下になると、医療機器を設置する関係上、クリニックとして使用できなくなる可能
       性があります。また、医療機器の大きさによっては患者に余計なストレスを与える設計になりかねません。

② 電気設備  診療科目によって必要な医療機器は異なります。当然必よな電気量を確保できなければ診療を行うことがで
       きません。電気容量を増やす工事には30~100万円の費用負担が生じます。

③ 空調・換気設備  天井高が低い、天井裏が狭い、天井内配管経路がないなどの事情によりエアコンの設置位置が限定さ
          れたり、設置さえできないことがあります。既設の場合であっても、移設・増設が必要となる場合がほ
          とんどです。また、換気設備についても、各部屋に換気・給気設備を付けることになりますから、同様
          の事情で余計なコストがかかったり、設置ができない場合があります。

④ 給排水衛生設備  クリニック内には、当然手洗いや流し台、トイレといった衛生設備が必要となります。テナントビル
          の場合、配水管の位置がすでに決まっており、そこに接続することになります。仮にテナント区画内に
          衛生器具が設置できない場合、そこでの開業を考え直す必要があります。また、仮に工事ができたとし
          ても、患者やスタッフの動線に影響が出る場合があります。

⑤ 消防設備  クリニックとして新たに多数の部屋に間仕切る場合、各部屋に自動火災報知機や避難口誘導灯を設置する必
       要があり、増設をする必要が出る場合があります。事前に各管轄の消防署と協議の上、確認し設置することが
       必要です。

※ 医療機関の設計・内装工事には専門の知識が必要です。必ず設計・工事実績
 ある業者を選定してください。